2023年11月09日 公開
江戸時代に発表された「読本(中国の文学から影響を受けた小説群。一例として『南総里見八犬伝』など)」の代表作。九編の作品から成る。怪奇ものとして、日本の独自性が感じられ、現代にもそのまま通じるようなエンターテインメント性がある。
各ドラマのメインキャラクターとしては、やはり幽霊や妖怪が登場する。が、ただその恐ろしさを描くばかりではなく、それらと遭遇した人間の心がテーマとなる。
友情、意地、信念、諦念、愛、憎悪......。フィクションだからこそ、それらがくっきりと読者に訴えられるのだ。
人は読書の傾向として、歳を重ねるにつれ、読書にリアリティを求めるようになりがちである。だが、リアリティを超えた自由なフィクションにこそ、読書の楽しみと教訓を強く得ることも、多々ある。その点で『雨月物語』は、リアリティを超えたフィクションを感じる読書に打って付けのファンタジーと言えよう。
更新:11月23日 00:05