2018年10月01日 公開
2019年06月18日 更新
天國では、天丼用の天ぷらは衣と油の配合を、普通の天ぷらと変えてある。今風にタレを上から掛けるのではなく、揚がった天ぷらを一度タレにくぐらせて御飯に載せるので、薄い衣であっさり揚げたのでは、タレに負けてしまうからだ。
試食させていただいた「B丼」は、池波さんが食べていた時代のものとは少し素材が異なるが、正に懐かしの味! 子供の頃、お蕎麦屋さんの出前で取った天丼は、こんな風に衣がしっとりしていた。タレをくぐってちょっぴり黒っぽいのも、なつかし〜!
ちなみに、昔は野菜の天ぷらは「精進揚げ」と呼んで区別していた。
天國の厨房には「天ぷら部」と「和食部」があって、天ぷらは「天ぷら部」、それ以外の刺身・煮物・焼き物は「和食部」が担当する。そして「天ぷら部」は新卒採用のみで、他店で修業した調理人は入れない。つまり、徹底した純粋培養の天ぷら職人集団である。
天ぷら部主任の早坂秀信さんも高校卒業以来、30数年間、天國ひと筋。最初は寮生活で、所謂(いわゆる)住み込みだった。お風呂は目と鼻の先の金春湯(こんぱるゆ)に通ったという。さすが、銀座。
父が天ぷら部で修業して故郷で店を開き、息子がまた天ぷら部に……と、親子二代にわたって修業した職人も数名いらっしゃる。
長い歴史のある店ならではのエピソードではないだろうか。同時に、職人さんを大切にしているお店なればこその実績と思う。
かつて銀座には東宝東和映画の試写室があったので、池波さんは月に何度も銀座を訪れ、食事と買物と散歩を楽しんだ。
池波さんにとって、銀座は長らくあこがれの街だった。銀座について書いたエッセイを読むと、作家として成功し、功成り名遂げて銀座を歩く感慨が、ひしひしと伝わってくる。
かつて敷居が高かった老舗に気軽に入れる喜び、過ぎ去った時間への愛惜、次第に近づいてくる人生の幕引きへの諦念。
それら全てを自身の中で咀嚼して、池波さんは銀座での時間を楽しんでおられたのだと思う。
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更新:11月23日 00:05