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「風神雷神図屛風」が日本に現存する奇跡 海外流出を免れたのは偶然?

2022年12月21日 公開

原田マハ(作家)

 

宗達とミケランジェロ

では、俵屋宗達とその作品「風神雷神図屛風」と、ルネサンスの絵画にどんな共通点があるのか──。

俵屋宗達の小説の構想を練っているときに、以前から親しくさせていただいている細見美術館の細見良行館長と、話をする機会がありました。

その際、「ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂の天井画で、神がアダムと指をあわせる絵を見たときに、なぜか宗達の風神雷神図を思い浮かべた」と館長がおっしゃったのです。

ルネサンス以前は、神やキリストは人に似せて描いてはいけないとされていたので、画家たちは、ギクシャクした抽象的な絵でキリストを表現していました。

ただ人間回帰をするルネサンスが始まると、美しい肉体を持ったキリストや神が描かれるようになります。システィーナ礼拝堂の天井画は、この人間賛歌の最盛期にミケランジェロが描いた傑作です。

館長が似ていると指摘したのは、身体の描き方。風神雷神を描いた絵は他にも数多くありますが、宗達が描いたものほど、筋骨隆々とはしていません。確かに、たくましく躍動感に溢れている点では、ルネサンスに近いものがあるのです。

そんなことから、宗達が天正遣欧少年使節に同行してローマへ行く、というストーリーが私の中に生まれてきました。

俵屋宗達という人物は、謎が多くてわからないことだらけですので、その代表作である「風神雷神図屛風」から、想像の羽を広げるのも面白いのではないでしょうか。

 

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