2020年06月25日 公開
2022年10月06日 更新
慶次:今回の『麒麟がくる』の時代考証はどこに注力されたのじゃ?
小和田:主役の明智光秀の前半生は、謎だらけです。どこで生まれたのか? 父親が誰なのか? 何年に生まれたのか? 史料が残っていないんです。といっても、分からないばかりでは映像にならないので、スタッフの皆さんと相談して出身や生まれた年を決めていきました。
慶次:なるほど。となると、例えば史実が多く残っている人物のほうが時代考証としては良いのですかな?
小和田:それがそうでもなくて、分かってしまっているものばかりだと、時代考証としての面白味がないんですよね。
物語として膨らませる要素が少なくなってしまうので。脚本家としては、前半生謎だらけの明智光秀は書きやすかったと思いますね。
慶次:若かりし頃の光秀が鉄砲を買ってくるシーンとか、多くの者が「ここで鉄砲を買ってくるんだ」と思ったのではないか。このようなシーンを作れる自由度がありますな。
慶次:小和田殿が歴史学者として、歴史の発信者として、心掛けておることはどんなところじゃ?
小和田:そうですね、できるだけ最新の説を取り入れるようにしています。従来の通説や定説なども、若手の歴史学者の研究によって変わってきている部分があります。しかし、多くの人が知っている通説や定説は書き換えにくいんですよね。
慶次:皆の中に今まで持っている、強い印象があるからのう。
小和田:ですので、新しい説を積極的に取り入れてドラマを通じて紹介するようにしています。ドラマは、多くの人に新しい説を取り入れてもらう良い機会になると思っています。
慶次:新しい説を紹介して、歴史の深みを伝えておるのじゃな。
小和田:ドラマは多くの人が見てくれますよね。例えば視聴率20%のドラマは約2,000万人の人が見ていると言われています。それだけ影響力が強いですね。大河ドラマが日本の歴史認識に与える影響は非常に大きいと思います。