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「大河ドラマの時代考証」ってどんな仕事? 『麒麟がくる』の小和田哲男先生に聞いてみた

2020年06月25日 公開
2022年10月06日 更新

小和田哲男(静岡大学名誉教授),前田慶次(名古屋おもてなし武将隊)

小和田哲男&前田慶次(名古屋おもてなし武将隊)

「名古屋おもてなし武将隊」は名古屋城にて観光客をもてなす武将と足軽の10人組である。2009年11月に結成され、名古屋ゆかりの6人の武将と4人の足軽で構成され、すでに10年以上にわたり活躍を続けている。

そのうちの一人、前田慶次氏は名古屋城検定に検定過去最高点で合格し同検定の名誉顧問を務め、日本城郭検定にも合格するなど歴史への造詣も深い。

前田慶次氏が自身のYouTubeチャンネル「前田慶次5分で戦国時代チャンネル」にてNHK大河ドラマ『麒麟がくる」の時代考証を担当する小和田哲男氏と談議をしている。本稿ではその一部を紹介する。

※本稿はYouTubeチャンネル「戦国・小和田チャンネル」「前田慶次5分で戦国時代チャンネル」にて配信された対談を再構成したものです。

 

史実と演出のどちらが重要視されるのか?

前田慶次(以下、慶次):まず小和田殿について簡単にご紹介させて頂く。小和田殿は歴史学者で静岡大学の名誉教授。様々なTV番組で監修を行っており、大河ドラマの時代考証は『麒麟がくる』を含め、今まで7作品を担当してきた、「戦国時代」の第一人者といっても過言ではない人物じゃ。それでは小和田殿、お願い申す。

小和田哲男(以下、小和田):よろしくお願いします。

慶次:まずは大河ドラマの時代考証とは、どのような仕事なのか聞いてまいりたい。

儂も名古屋おもてなし武将隊、前田慶次として10年前に現世に甦ったため、時代考証という仕事が、戦国時代がどのようなものであったか伝えているということは分かっているが、大河ドラマでは具体的にはどのような仕事をしておるのだ?

小和田:大河ドラマの時代考証というのは、台本が出来て、出演者やスタッフなどに渡る前に、歴史的な間違いがないかをチェックするのが大きな仕事の一つです。

慶次:それは、大切な仕事じゃ。例えば、儂が脚本家であれば台本を役者ではなく、まずは小和田殿に見せ、チェックをした小和田殿が「信長はこのようなことをしていなかった」とか「この者はまだこの時代には生まれていない」などと申すのだな。

小和田:「この者とこの者が会っているのは歴史的におかしい」などをチェックします。

慶次:脚本家と小和田殿とのやり取りは、何回くらいあるのじゃ。

小和田:3回くらいは、やり取りしますね。

慶次:3回!! 思っていたより多い! それは小和田殿の「時代的におかしい」という指摘に脚本家として、どうしても入れたい演出などあって、食い下がってくる場面など、しのぎを削る戦いがありそうじゃな。

小和田:そうですね。演出であっても、史実とのずれがある場合は、直してもらうようにしています。

 

「絶対」「家族」という言葉は戦国時代に存在しなかった

小和田:台本のチェックで多いのはセリフの直しです。セリフの言い回しが現代語になってしまっていることがあります。今は、民放局やNHKでも時代物のドラマが少なくなってしまっているので、脚本家が時代物の脚本に慣れていないんですよね。

例えば、よくある間違いとして「儂は、絶対に家族を守る」というセリフがあります。戦国時代に「絶対」という言葉はありません、「家族」という言葉もありません。

それを脚本家に伝えると、「では、どういうセリフにすれば良いか」という質問がくるので、「儂は必ずや、妻や子を守る」といった表現を伝えています。私たちが今、持っている常識と戦国時代の常識とのずれが結構、多いんですよ。

慶次:さようですな。

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