2019年11月11日 公開
2022年07月27日 更新
2014年3月号では「イチオシの歴史・時代小説」というお題でしたが、今回は少し切り口を変えて「感動した歴史小説」です。「イチオシ」の作品と、「感動した」作品。みなさまの回答は同じ作品ですか、それとも違う作品でしょうか。違う、と答えた方の詳しい理由も聞いてみたい気がします。さて、以前とは似て非なる今回のお題、結果やいかに?
以前の「イチオシの歴史・時代小説」ランキングと比べると、「感動した歴史小説」では半分の作品が入れ替わりました。「イチオシ」では第1位『竜馬がゆく』、第2位『坂の上の雲』、第3位『利休にたずねよ』でしたが、上位はどう変わったのか——それでは、今回の結果を細かく見ていきましょう。
なんと「イチオシ」に続き、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』が、第1位に輝きました! 「悩みくじけながらも、自分の夢を追い続けることの素晴らしさを知りました」(50代、男性)、「家族との別れや、仲間との意見の違いや別れに感動しました」(40代、男性)など、激動の時代の中で、己の夢を追い求めた竜馬の姿に、心を動かされた方が大多数。中には「司馬遼太郎の最高傑作」(70代、男性)という声も。
第2位は、イチオシ第四位からランクアップ、司馬遼太郎『燃えよ剣』。「新選組の土方歳三の男としての人生がつづられていて、感動した」(50代、男性)と、やはり土方の信念を貫いた生き様に感動を覚えた方が多かったようです。
続く第3位も、司馬遼太郎作品である『坂の上の雲』。「激動の明治日本において、高邁な思想を持って突き進んだ人々の生き方に感動した」(60代、男性)といった、濃密な群像劇に票が集まりました。
トップ3は、全てが司馬遼太郎作品という結果に。日本の歴史とそこに生きた人々を、重厚かつ魅力的に描いた司馬作品は、多くの方々の心に感動をもたらしたようです。
第4位は、イチオシ圏外から大躍進、浅田次郎『壬生義士伝』! 脱藩浪士である新選組隊士・吉村貫一郎の義や家族愛、友情を描いた本作には、「一人の男の人生を、多角的に徹底して深く描いたのが素晴らしい」(30代、男性)のほか、「涙なくして読めない」などの意見が寄せられました。
ここからは再度、司馬作品が続きます。第5位は、石田三成の生き様や友情に心震わせた方が多かった『関ヶ原』。
第6位には同率で二作品。まずは、油売りから一国の主にまで上りつめた斎藤道三と、常識にとらわれない織田信長の2人を描いた『国盗り物語』。もう一作は、長岡藩家老・河井継之助の名を世に知らしめた作品『峠』。後者には、「武士としての人生の完結を見ました」(50代、男性)などの意見が届きました。
続いて吉川英治の二作品、宮本武蔵の真っ直ぐな生き様や成長に票が集まった『宮本武蔵』と、英傑たちの人間ドラマが鮮やかに描かれた『三国志』が、同率で第8位にランクイン。
第10位は、「クライマックスは最高に感動できる、素晴らしい小説だと思います」(60代、男性)という声が寄せられた、仙台藩伊達家のお家騒動、いわゆる「伊達騒動」を題材とした、山本周五郎『樅ノ木は残った』。従来、悪人とされてきた家老・原田甲斐ですが、本作での彼の選択には、心を動かされること必至の名作です。
ここからは、興味深い意見をまとめて紹介します。
▼『小説 上杉鷹山』(童門冬二)
「純粋無垢で有言実行した、鷹山の人間性に感動する」(40代、女性)
▼『真田太平記』(池波正太郎)
「兄弟をも分かつ戦国の世にあって、策謀の智を生かして、武勲をなした真田家の盛衰がドラマチックだった」(50代、男性)
▼『会津執権の栄誉』(佐藤巖太郎)
「美しく滅んでいく様は、どこか寂しく切ないものを感じる」(30代、男性)
▼『出星前夜』(飯嶋和一)
「『島原の乱』を引き起こすきっかけを作った若い主人公・寿安が、医家として人々の命を救い、天寿を全うしたことに感動した」(30代、女性)
「イチオシ」から三作増え、「感動した」歴史小説では全体の6割が司馬作品に! その人気に衰えはなし、ですね。
また、今回目立ったのが、感動した作品から「生き方を学んだ」という意見でした。物語の人物のようにはなれないものの、自分が作品から感じた人間の美しさは、いつまでも大切にし続けたいものです。
たくさんのご投稿、ありがとうございました!
更新:11月21日 00:05