2019年01月30日 公開
2023年10月04日 更新
枕橋から南東へ向かい、春日通りの南側、横川にかかる紅葉橋でバスを降りる。
すぐのところにあるのが「出村の桜屋敷」の立て札で、さらに少し歩くと「高杉銀兵道場」の立て札もある。
『鬼平犯科帳』では、若かりし頃の長谷川平蔵は、本所の出村町に道場にある一刀流の高杉銀兵道場に通い、修行を重ねていた。
この道場で出会ったのが岸井左馬之助で、平蔵のライバルであり、恋敵でもあった。というのも、二人はともに、道場主の孫娘・おふさに恋心を抱き、「おふささんに手を出したら斬る」とお互いに誓い合っていたのである。
のちに豪商に嫁ぐことになり、船で去っていくおふさを、二人は「出村の桜屋敷」から見送る。『鬼平犯科帳』の名場面の一つだ。
いずれも、物語中の場所ではあるものの、平蔵と左馬之助の気持ちを考えると感慨深いものがある。
「高杉銀兵道場」の東へ数十メートル行くと、法恩寺という大きな寺がある。
『鬼平犯科帳』第1巻の「本所・桜屋敷」に登場する寺だ。
剣友である岸井左馬之助と、20年ぶりに再会する場所である。
法恩寺は日蓮宗の寺院で、太田道灌が江戸城を築城するにあたり、長禄2年(1458)に建立した。
江戸城の鬼門にあたる丑寅(うしとら/北東)の方角を抑える祈願所として、平河(千代田区)に建てられたものである。
当初は本住院という名であったが、のちに法恩寺と改称され、元禄元年(1688)に現在の地に至った。
山門をくぐった左側には三重塔が、そして寺内には太田道灌の墓もある。
『鬼平犯科帳』第14巻の「尻毛の長右衛門」もまた、この法恩寺から始まる物語である。
墨田区にはこの他にも多くの「鬼平」スポットがあるので、『鬼平犯科帳』のファンは是非一度足を運んで、鬼平の世界に浸っていただきたい。
更新:11月23日 00:05