2019年01月28日 公開
2022年12月28日 更新
(C)2019「闇の歯車」製作委員会
藤沢周平作品には珍しいサスペンス『闇の歯車』が、時代劇専門チャンネル開局20周年記念作品として映像化される。
現金強奪を図る五人の男たちを描いた小説は、いかなる映像作品に仕上がったのか。主演の瑛太さんと好敵手を演じる橋爪功さんが、その魅力を語り合った。
──藤沢周平作品には珍しいサスペンスだそうですが、どんな物語でしょうか。
瑛太 僕が演じる佐之助は、闇の世界で日々の糧かてを得ています。そんな佐之助や他の仲間に対し、儲け話として、橋爪さん演じる伊兵衛が、商家への押し込みを持ちかけることになります。
サスペンスが軸ですが、押し込みを図る五人の男たちは、病身の妻を持つ浪人、愛人と婚約者との間で悩む若旦那 、罪を犯した過去を持つ老人と、個性豊かです。
登場人物それぞれに面白味があったり、佐之助をめぐるラブストーリーもあったりと、色々なテイストが入っています。
橋爪 藤沢さんというと、人情もののイメージですが、今回の原作はサスペンスであり、ハードボイルド作品と言ってもいいかもしれません。
雑誌に最初に発表された時の作品名は『狐はたそがれに踊おどる』だそうですが、たそがれとは、夕暮れ時、つまり逢魔が刻を指します。
僕も大好きな時間帯で、昼と夜のはざまの摩訶不思議な時間に起こる出来事をサスペンスタッチで描いた作品ですね。
──映像化するにあたって、どんな台本になっているのでしょうか。
瑛太 原作は文庫本一冊分あるのですが、監督はできるだけ説明的な言葉を排除して、躍動感のある作品にしたいとおっしゃっていました。実際にその通りの作品に仕上がっていると思います。
橋爪 時代劇とは、僕は基本的に「省略と飛躍」だと思っているんです。
この作品を現代劇でやろうとすると、伊兵衛が仲間を引き込もうとするのに、台詞が多くなってくどくなるかもしれません。
けれども、時代劇はそこをスッと進めることができる。だから、お客さんにはかえって見やすいのではないでしょうか。
もちろん、瑛太君の役には、押し込みに加わるまでの葛藤があるんだけれども、最後まで一気に展開していくので、ダイナミズムがあると思います。
──それぞれ、どんな人物像を思い描きながら、演じられましたか?
瑛太 佐之助が押し込みに加わるには、それなりに背景があり、そこにはある女性も関わってくるわけですが、その心理的な面は、観る方が想像する楽しみの部分でもあると思います。
今回は事前に監督と、「こんなカット割りで、こんな表情で」とディスカッションしながら役作りをしていきましたが、単に二枚目の町人というだけでなく、喜怒哀楽のようなものが、随所にうっすらとちりばめられたらいいなと考えつつ演じました。
橋爪 僕は、無責任なようですが、あまり考えず、その場の感覚で演じているような感じです(笑)。伊兵衛というのは、他の男たちを押し込みに誘うという、底知れないような人物ですからね。
──今作は時代劇専門チャンネルでの放送前に、劇場上映もあるそうですね。
瑛太 ある意味、映画的だなと思ったのは、やはり説明的なところを極力排除しているところだと思います。
一つひとつのカットが、登場人物の心理を想像したくなるような、観る方にとって面白味のある撮り方になっていますね。
橋爪 それは時代劇だからできることですよね。今回は、京都の撮影所で撮っていますが、スクリーンに耐えうる映像を撮れるのは、京都ならではです。
しかし、大きなスクリーンで自分の顔なんか見たくないですね(笑)。
瑛太 監督は、ヨリ(アップ)はあまり使わないっておっしゃっていましたよ。
橋爪 ありがとうございます(笑)。
──最後に、作品の見どころと魅力を教えてください。
瑛太 テンポがいい作品なので、「どうなっていくのだろう」と、頭をフル回転させつつ、ストーリー展開を楽しんでいただけるのではないでしょうか。
また僕は、匕首を使った殺陣もあるので、楽しみにしていてください。
橋爪 押し込みのところは、ドキドキする程いいシーンだし、役者にとっては芝居のしどころで、五人五色の色が出せたので、面白いと思います。
瑛太君のいうように、テンポよく、観る方が前のめりで観られるような作品ですので、ご期待ください。
(C)2019「闇の歯車」製作委員会
逢魔が刻。それは、黄昏──。人の顔は闇に溶け、静けさが街を支配する一瞬の時間。
江戸時代、人々は、魑魅魍魎が蠢めくと言われるその時刻を、畏れをもって迎えた……。
初秋の頃、江戸・深川。闇の世界で日々の糧を得る佐之助は、行きつけの酒亭おかめで、謎の男・伊兵衛と出会う。
「儲け話があるんですよ。一口、乗っちゃくれませんか」
危険な匂いを感じ、席を蹴る佐之助。同じ頃、ふとしたきっかけで、おくみという女と暮らすことに。彼女との未来に仄かな希望を抱く佐之助は、やがて伊兵衛の誘いに乗る。しかし、仲間となる男たちは、浪人、若旦那、白髪の老人──いつもおかめで顔を合わせながら、口を聞いたこともない男たちだった。佐之助らいずれも押し込みなどしたことがない素人四人。そして、伊兵衛。
──狙うのは、逢魔が刻、さる商家に眠る七百両。回りだす闇の歯車。しかし、それぞれを取り巻く女たちをも巻き込んで、彼らの人生の歯車は静かに狂い始める……。
更新:11月23日 00:05