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世界で唯一!「モネの庭」の名を許された地・高知県北川村で美しき世界を体感する

2026年09月18日 公開

歴史街道編集部

水の庭の太鼓橋(提供:北川村「モネの庭」マルモッタン)写真:水の庭の太鼓橋(提供:北川村「モネの庭」マルモッタン)

モネは1883年、フランス北部のジヴェルニーに移住し、理想の家と庭を築こうとした。モネの終の棲家となったその地では今もなお、彼が愛した景色を見ることができる。しかし実は日本にも、世界で唯一、「モネの庭」の名を掲げることを許された場所がある。高知県安芸郡北川村の「北川村『モネの庭』マルモッタン」だ。編集部がその地を訪ねると、美しい情景だけでなく、モネの精神を、庭に映し出そうとする人々の姿も見えてきた──。

※本稿は、『歴史街道』2026年10月号から一部抜粋・編集したものです。

 

「モネの庭」ができた理由

フランスのジヴェルニーの「モネの庭」は、モネの愛した美しい景色が見られる場所として、今も多くの観光客が訪れている。

モネが情熱を注いだ庭は、彼の死後、荒廃していたが、支持者の尽力によって、蘇ったという。

そして日本には、ジヴェルニー以外で、世界で唯一「モネの庭」と名乗ることを認められた場所がある。「北川村『モネの庭』マルモッタン」だ。なぜ日本に「モネの庭」があるのか──その答えを求めて、高知県に向かった。

「北川村『モネの庭』マルモッタン」は、奈半利駅よりバスで10分、高知空港からは車で60分ほど。

早速、施設の代表取締役社長・和田昌敏さんに、この地に「モネの庭」がある理由を尋ねると、ドラマのような経緯を教えてくれた。

「北川村では1990年代に村おこしとして、日本屈指の収穫量と質を誇る柚子を軸に、柚子のワイナリー事業を展開しようとしたのですが、紆余曲折の末、別の新たな事業を起こすべく、プロジェクトチームを立ち上げたんです」

方向性を模索するなか、プロジェクトの関係者が飛行機で手にした機内誌で偶然、ジヴェルニーのモネの庭の写真を見つけたという。

「美しい景色に心惹かれると同時に、自然豊かで、農業も盛んな北川村なら、フラワーガーデンができるのではないか、という着想にいたったのです」

そして、当時のプロジェクトの担当者──今の北川村の村長は、何の伝手もないまま、モネの庭を北川村でもやらせてほしいと、フランスへと交渉に赴いたそうだ。

あまりに大胆だが、「果敢に行動するのが、高知県民らしいチャレンジ精神なんです」と和田さん。

日本人が急にやってきて、ジヴェルニーのモネの庭の責任者も驚いたことだろう。

「ですよね。しかし、熱意が先方の琴線に触れたようで、当時のクロード・モネ財団理事長のヴァン=デル=ケンプ氏(故人)から、『小さな村の頑張りに協力しましょう』との言葉と支援をいただき、2000年に、開園のはこびとなったのです」

 

オリジナルの庭も

水の庭のスイレン写真:水の庭のスイレン

北川村のプロジェクトチームの熱意と行動力に驚きつつ、園内を見せてもらうことに。園内は「水の庭」「花の庭」「ボルディゲラの庭」のエリアに分かれている。

最初に向かった水の庭では、モネの代表作「睡蓮」が描かれたジヴェルニーのモネの庭が再現され、太鼓橋や藤棚など、モネの絵に描かれた風景を楽しむことができる。

水に浮かぶスイレンと、水面に映し出されるその姿も美しい。

編集部が訪ねたのは7月だが、青いスイレンも咲いており、多くの人がその美しさを愛でていた。

「熱帯性の青いスイレンは、フランス北部のジヴェルニーでは育てることが難しく、モネは温室を建ててまで栽培に挑戦しましたが、開花させることができませんでした。そんなモネが夢見た青いスイレンが見られるのも、ここならではでしょう」と、和田さん。

モネが夢見た青いスイレン写真:モネが夢見た青いスイレン

次に寄った花の庭は、色鮮やかな花壇が印象的だ。チーフガーデナーの町田結香さんにうかがうと、ジヴェルニーと北川村では気候も、育つ植物も違うなかで、北川村の気候にあった植物を植えているとのこと。

「ここでは、水の庭も含めてモネの絵を再現し、『モネの庭の精神』を保つことが何よりも大切です。モネの庭の精神が保たれているかを確認するために、今でもジヴェルニーの庭園責任者が北川村に来ますし、私たちも、ジヴェルニーに行き、実際に本家の庭師と、朝から晩まで一緒に庭仕事をしているんです」

町田さんの言葉からは、この庭を保つことの責任の重さが伝わってくる。

「本家の方々と作業をするなかで、私自身改めて、モネの庭の精神がどのようなものかを考え、日本に持ち帰るようにしています」

そう語る町田さんは、モネの本物の絵を見ることも大切にし、筆のタッチや全体の印象からインスピレーションを受け、庭づくりに活かすよう心掛けているそうだ。

写真:花の庭写真:花の庭

花の庭(提供:北川村「モネの庭」マルモッタン)写真:花の庭(提供:北川村「モネの庭」マルモッタン)

ところで、水の庭と花の庭は、本家ジヴェルニーにもあるが、北川村のモネの庭には、オリジナルとして、モネが描いた地中海の絵の世界観をモチーフにした、ボルディゲラの庭があるとのこと。

ボルディゲラの庭に足を運ぶと、ヤシやオリーブの木など、地中海を思わせる植栽がなされていて、他の2つの庭とは異なる趣を味わえた。

ボルディゲラの庭写真:ボルディゲラの庭

園内には色とりどりの花が咲き誇る写真:園内には色とりどりの花が咲き誇る

 

食事で楽しむモネの世界

「土佐沖獲れ白身魚のブイヤベース 〜モネレシピ〜」写真:「土佐沖獲れ白身魚のブイヤベース 〜モネレシピ〜」

園内を歩いていると、「カフェ モネの家」が目に入ってきた。

「実はモネは、庭づくりだけではなく、料理にも造詣が深くて、様々な創作料理を作っていたんです」と和田さんが教えてくれる。

カフェでは、北川村の地元食材を使った料理や青いスイレンをイメージしたデザートだけでなく、モネが遺したレシピを基にした食事もあり、ここでしか食べられないメニューを味わえるそうだ。

モネのレシピを参考にした「土佐沖獲れ白身魚のブイヤベース〜モネレシピ〜」をいただくと、香り高くて、味に深みがあり、自然と顔がほころんでくる。

「〜北川村産『柚子』ドレッシングを使用した〜モネのサラダプレート」写真:「〜北川村産『柚子』ドレッシングを使用した〜モネのサラダプレート」

青いスイレンをイメージしたデザート写真:青いスイレンをイメージしたデザート

ゆずジュースとゆずかけソフト写真:ゆずジュースとゆずかけソフト

園内には「手づくり工房」もあり、そこで焼かれるパンも、スイレンをイメージしたものや、地元食材を使ったものなど、バリエーションが豊富だ。

手づくり工房のパンはテイクアウトもできる写真:手づくり工房のパンはテイクアウトもできる

こうした料理を手掛ける人たちも、ガーデナーの町田さんと同じく、本家「モネの庭」の精神を大切にしつつ、北川村ならではの色どりを加えようと、日々、奮闘しているのだろう。

「なぜ、日本にモネの庭が?」との疑問から北川村を訪ねたが、美しい景色だけでなく、庭に懸ける人々の想いにも触れ、清々しい気持ちで庭を後にしたのだった。

ギャラリーショップ。モネ関連のグッズを購入できる写真:ギャラリーショップ。モネ関連のグッズを購入できる

 

コラム 「モネの庭」から足を延ばして…北川村で感じる歴史の息吹

木積星神社写真:木積星神社

「北川村『モネの庭』マルモッタン」の周辺には、歴史を感じられるスポットが数多くある。

モネの庭から車で18分ほどのところに鎮座する木積星神社は、木々に囲まれた閑静な場所に佇んでいる。鳥居をくぐり、趣のある階段を登ると、広い境内へとたどり着く。境内には樹齢数百年の杉が聳え、厳かな空気に包まれている。豊かな自然に、思わず深呼吸したくなる。

木積星神社では、悪魔退治、五穀豊穣を願い、1100年以上前から、2年に1度、「お弓祭り」が開催されている。

祭りは、12人の射手が1008筋の矢を放つという木積星神社ならではのもので、高知県無形民俗文化財にも登録されている。

北川村といえば、幕末の志士・中岡慎太郎の故郷としても知られている。

モネの庭から車で7分ほどの中岡慎太郎館では、慎太郎の生涯に触れることができる。

慎太郎館の目の前には、ゆずをはじめとした、北川村の食材を使用した料理が味わえる、慎太郎食堂もある。

また近くには、慎太郎の生家や、遺髪墓地などもあるのであわせて訪ねたい。

ちなみに、モネは1840年生まれで、慎太郎は天保9年(1838)生まれ。つまり同時代人で、それぞれの地で激動の時代を生きた彼らに、思いを馳せてみるのもよいだろう。

中岡慎太郎館写真:中岡慎太郎館

北川村を含む中芸地域は林業が盛んで、明治時代には伐採木の運搬用の魚梁瀬森林鉄道が敷かれており、その鉄道跡も見学することができる。

森林鉄道施設として初めて国指定重要文化財となっており、北川村では、犬吠橋、井ノ谷橋、堀ケ生橋、二股橋、小島橋の5ケ所が指定されている。

森林鉄道の小島橋写真:森林鉄道の小島橋

森林鉄道の堀ケ生橋写真:森林鉄道の堀ケ生橋

北川村にはさらに、北川村温泉ゆずの宿という温泉宿もある。

源泉は、地域で80年以上前から親しまれ、手触りがよく、肌にしっとりとなじむ美肌の湯として長く愛されてきたそうだ。

温泉宿はモネの庭から車で20分ほどの自然に囲まれた場所にあり、昼は森林浴、夜は星を眺めながら温泉を楽しむことができるだろう。

モネの庭から足を延ばして、あわせて巡ってみてはいかがだろうか。

北川村温泉ゆずの宿(写真提供:北川村温泉ゆずの宿)写真:北川村温泉ゆずの宿(写真提供:北川村温泉ゆずの宿)

北川村周辺地図北川村周辺地図

 

【インフォメーション】

北川村「モネの庭」マルモッタン

開園時間︰9時~17時(最終入園16時半)

休園日︰6月~10月の第1・第3水曜日、冬期休園12月1日~2月末日

※2027年は「水の庭」工事のため、3月12日まで休園。春の開園は3月13日予定。

T E L︰0887-32-1233

 

中岡慎太郎館

TEL︰0887-38-8600

北川村温泉ゆずの宿

TEL︰0887-30-1526

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