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司馬遼太郎の最高傑作!? 史料が少ない『項羽と劉邦』の面白さ

2024年12月06日 公開

白蔵盈太(作家)

私の一冊

歴史小説ファン必見の、司馬遼太郎著『項羽と劉邦』の魅力とは? 『歴史街道』12月号では、作家・白蔵盈太さんに、お薦めの一冊について語って貰った。

※本稿は、白蔵盈太著『歴史街道』2024年12月号「私の一冊」より、内容を一部抜粋・編集したものです

 

史料の乏しさゆえの面白さ

『項羽と劉邦(上・中・下)』 司馬遼太郎著 新潮文庫

司馬遼太郎の代表作といえば大抵は『竜馬がゆく』『坂の上の雲』など、幕末維新期以降を舞台とした小説の名が挙がりますが、私にとっての司馬遼太郎の最高傑作は、誰が何と言おうと『項羽と劉邦』です。

司馬遼太郎といえば膨大な資料を調べ尽くすことで有名で、それが司馬作品の面白さの源泉ではあるのですが、それゆえに近代を舞台にした彼の小説には豆知識のような余談が多く、よく脱線します。それで「いま何の話だったっけ?」と本筋を見失うことが時々あります。

ですが『項羽と劉邦』は今から2200年前の中国が舞台であるため、調べようにもそもそも史料がわずかしか残っていません。そのため本作は、この脱線があまりなくて読みやすいのです。文庫本で上中下の3冊という長さも実に手頃です。

また、登場人物の性格も史料が乏しいので、司馬遼太郎が記録から推測して創作したであろう部分が多くあります。

その結果、本作の登場人物には司馬遼太郎の人間観が、やや戯画化された形で反映されていて、今風に言うと全員「キャラが立って」いるのです。

中国で幾度となく繰り返されてきた、王朝の衰退と新王朝勃興の典型的なパターンもこの一冊でだいたい掴めますし、中国史の入門書としても自信を持ってお薦めできる一冊です。

 

著者紹介

白蔵盈太(しろくら・えいた)

作家

昭和53年(1978)、埼玉県生まれ。第3回歴史文芸賞最優秀賞を受賞し、『あの日、松の廊下で(原題:『松の廊下でつかまえて』)』でデビュー。おもな著書に『関ケ原より熱く 天下分け目の小牧・長久手』『実は、拙者は。』などがある。

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発売日:2024年12月06日
価格(税込):840円

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