2018年07月18日 公開
2018年08月20日 更新
──源七の生き方については、演じてみて、どう思いましたか?
「ふと悪に染まりたくなったり、悪の美学に憧れることは、誰しも通る道なんですよ。源七たちのような渡世人は、そのままダークサイドに突っ込んでいって、戻れなくなった人たちだと思います。
裏社会でしか生きていけず、平穏な生活を捨ててきた源七。ところが、老年に差しかかり、偶然連れ合った若い渡世人・彦太郎が、ふと息子のように思えてしまい、彼を守ろうとするのです。
源七が彦太郎のことを思って、『おめえは渡世人にむいてねえ』と指摘するシーンがあります。これは、裏社会で生きてきた源七の複雑な心中が、よく表現されているセリフだと思います。特に、自分としても、うまく演じることができたシーンでした。
源七は、殺しの稼業に手を染めるのは金を稼ぐため、と割り切っている。イメージとしては職人に近いかもしれません。
それでも、人殺しという重い業ゆえに平穏な生活を捨てたことへの後悔と、己の美学とのはざまで揺れることもあります。そういった姿が、人間としてとても魅力的でした」
──源七のかつての相棒・半蔵役を、今年急逝された大杉漣さんが演じていらっしゃいます。
「大杉さんとは時代劇初共演で、とても喜んでいらっしゃいました。昨年末に作品の試写会でお会いした時はお元気だったので、突然の訃報を聞いて驚きました。本当に残念でなりません。撮影現場では二人とも、年を重ねたバディ役ということを無言で感じ合っていました。そんな2人だからこそできる壮絶なクライマックスを、ぜひ見ていただきたいです」
──今回は、池波作品の戯曲『雨の首ふり坂』を初めて映像化したものです。
「その戯曲の元になった短篇小説『雨の杖つき坂』は、客観的な視点から淡々と描かれていますが、ドラマは、より情が深く、細かい設定を加えた作りとなっています。
ぜひ、何度も隅々まで見てほしい。登場人物それぞれに感情移入できますし、見るたびに新しい発見がある、奥深い作品に仕上がっていると思います」
中村梅雀、三浦貴大、中尾明慶、泉谷しげる、大杉漣ほか
舞台は江戸時代。裏社会の渡世人・白須賀の源七(馬場徹)は、藪塚の半蔵(金井勇太)と組み、前坂一家の親分殺しを請け負った。目的は達成するものの負傷した源七は、髪結いのおふみ(芦名星)に助けられる。おふみの家に留まっていた源七だが、前坂一家の刺客が迫っていることを知り、自分の子を宿したおふみを残して姿を消す。
それから25年後、年老いてなお殺しの稼業を続けながら諸国を渡り歩いていた源七(中村梅雀)は、信州追分で若い渡世人・白井の彦太郎(中尾明慶)と出会う。竹原一家の親分(矢島健一)殺しを二人で請け負うが、もう少しのところで源七の体の具合が悪くなり仕損じてしまった。
竹原一家の追手を振り切った源七と彦太郎は、小諸宿でうどん屋を営む茂兵衛(泉谷しげる)に匿われる。この日を境に、二人は堅気の世界に身を置くこととなった。
亡くなった茂兵衛が遺したうどん屋と孫娘を守りながら、彦太郎と共に、穏やかな日々を過ごす源七。しかし、幸せは長く続かなかった。竹原親分の命を受けた刺客、若いが腕の立つ橋場の万次郎(三浦貴大)と、かつての相棒・半蔵(大杉漣)が現われたのだ。
運命のしがらみに絡め取られ、源七が再び、長脇差を手に立ち上がる──。
番組公式HPはこちら
https://www.jidaigeki.com/kubifurizaka/
更新:11月22日 00:05