2015年04月02日 公開
2022年08月15日 更新
刀剣を鑑賞するときには、「1に姿、2に地鉄(じがね)、3に刃文(はもん)」を見て味わうようにするといいでしょう。博物館や美術館でもガラスケース越しに鑑賞できますが、刀剣店では手に取って見ることができます。できるだけ「現物主義」で、刀を身近に感じてみるようにしたいですね。
そしてもう1つ、鑑賞の重要なポイントとして、刀の来歴があります。事前にその刀についての知識を持っていれば、より深く味わうことができます。では実際に、戦国時代の一振りの刀を例にとって、説明してみましょう。(写真提供:銀座長州屋)
この刀は、戦国時代の備前長船の刀工・孫右衛門尉清光(まごえもんのじょうきよみつ)の作で、「為紀之朝臣宗景作之」と銘が入っています。宗景とは、備前国の天神山城主・浦上宗景(うらかみむねかげ)のことです。浦上氏は、備前・播磨・美作三国の守護大名赤松氏の重臣でしたが、力をつけて自立します。宗景は天神山城を拠点に備前東部を支配し、旧主の赤松氏や毛利氏と対立します。いわば、中国地方の戦国史の立役者の一人と言えます。この浦上宗景の信頼が厚かった刀工が、孫右衛門尉清光でした。
この刀は茎(なかご)が短く、片手で扱いやすくなっています。そして二尺二寸二分(67.2cm)という長さも、注文主が自身の体格を考慮し、素早い抜刀ができるように最適の長さを指示したと思われます。地刃の出来からみて最高品質の鉄を使用したことも歴然としていて、これこそ戦国期にオーダーメイドされた極上の一振りであると言えます。
このような来歴を知っておくと、鑑賞する時に見方が変わってくるでしょう。たとえば姿を見てみると、身幅が広くて重ねが厚く、手元から反って(腰反り)いながら、中程から先へ行ってなお強く反りが加わっています。これは戦国期特有の緊張感を感じさせる姿と言え、乱世を生きた武将と清光がこの刀に込めた思いが感じられます。
このように、その刀が作られた来歴や時代背景に思いをめぐらせると、より深くその刀を理解できると思います。鑑賞する際の一助としてみてください。
★『歴史街道』2015年5月号は、総力特集「刀剣と乱世」。こちらもぜひご覧ください。
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更新:11月22日 00:05