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特別インタビュー 昭和から令和へ...「鬼平犯科帳」が半世紀以上も愛され続ける理由

尾美としのり(俳優)

「鬼平犯科帳 本所の銕」より(©日本映画放送、以下同)「鬼平犯科帳 本所の銕」より(©日本映画放送、以下同)

半世紀以上にわたって映像化され、愛され続けている、国民的作品がある。

池波正太郎の代表作のひとつ『鬼平犯科帳』だ。

2026年10月10日(土)には、松本幸四郎主演「鬼平犯科帳」シリーズの最新第8弾となる市川染五郎主演「本所の銕(てつ)」が独占初放送される。

なぜ、「鬼平犯科帳」シリーズは時代を超えて愛されるのか。そして、最新作の魅力とは──。

中村吉右衛門主演シリーズに続き、「鬼平犯科帳」に異なる役でレギュラー出演することになった尾美としのりさんの目線から、「鬼平」の世界を存分に語っていただいた。

※本稿は、『歴史街道』2026年11月号から一部抜粋・編集したものです。

 

シリーズ出演への思い

長谷川銕三郎(市川染五郎)と相模の彦十(尾美としのり)長谷川銕三郎(市川染五郎)と相模の彦十(尾美としのり)

火付盗賊改方長官・長谷川平蔵、通称「鬼平」の活躍を描いた、池波正太郎による時代小説『鬼平犯科帳』は、昭和44年(1969)に映像化されて以来、時代を超えて多くの人に愛されてきた。

そして今年10月10日(土)には、松本幸四郎主演「鬼平犯科帳」シリーズの最新第8弾「本所の銕」が、市川染五郎さんを主演に迎え、時代劇専門チャンネルにて独占初放送予定だ。

本作では、これまで火野正平さんが演じてきた密偵・相模の彦十を、尾美としのりさんが演じることとなった。

かつて尾美さんは、中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」シリーズで長年、同心・木村忠吾を演じた。

中村吉右衛門主演、松本幸四郎主演の両シリーズにレギュラー出演をするのは尾美さんが初めて。

尾美さんに相模の彦十としての出演オファーが来たときの心情をうかがうと、意外な答えが返ってきた。

「大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の撮影中に、控室でマネージャーから、『鬼平犯科帳』出演の話が来ていると聞き、まず率直な感想として、僕はもうこの作品に関わらないほうがいいのではないか、と実は思ったんです。

『鬼平犯科帳』シリーズはとても面白いですし、役者さんもスタッフの方も皆さん素晴らしいので、そういった環境でまた仕事ができるというのは楽しいし、嬉しいことなので関わりたいという気持ちもありました。

でも、中村吉右衛門さん主演のシリーズに木村忠吾として長年出演させていただいたことで、僕のなかで『鬼平犯科帳』には一旦区切りがついていましたし、違う役で出ることで、観てくださる方に余計な感情が入ってしまうかもしれない……。だからこそ、ゲスト出演なども一切しないほうがいいと思っていたんです」

その言葉からは、尾美さんにとって「鬼平犯科帳」が特別な意味を持つことが切々と伝わってくる。だが、そのようななかで相模の彦十役を受けるのを決めたのはなぜなのか。

「原作者の池波正太郎先生の事務所の方も、松本幸四郎さんも、山下智彦監督も、このシリーズに関わる皆さんが僕を希望してくれていると聞いて。

さらに、僕が出演をためらうようだったら、京都から山下監督が説得に来るとまで言われたんです。そんなふうに言っていただいたら、もう断れないですよね。やるしかないと思いました。シリーズに関わる皆さんに背中を押してもらって、出演を決められた気がしています」

尾美さんがそこまで出演を躊躇ったのは、これまで相模の彦十を演じてきた先人たちを知るからこそでもある。

「僕のなかで相模の彦十は、江戸家猫八師匠のイメージが強くて。30年近くシリーズでご一緒するなかで、師匠の演じる彦十がとても素敵だったのを、間近で見てきました。だからこそ、僕に演じられるのだろうかと。

火野正平さんが演じられた彦十も拝見したのですが、とても面白かった。

僕も演じるからには白髪を活用したり、シワを足したり、背筋を丸めたり、ちょっと膝を折って歩いたりするなど、いろいろと工夫をしながら、彦十として作品のなかにうまく溶け込めたらいいなと思っています」

 

若き日の平蔵・銕三郎と彦十

長谷川銕三郎長谷川銕三郎

最新第8弾「本所の銕」は、原作『密告』で描かれた長谷川平蔵の若き日、銕三郎時代のエピソードに着想を得たオリジナルストーリーだ。今冬に時代劇専門チャンネルにて独占初放送予定の第9弾「密告」の前日譚にもなっている。

物語では、「本所の銕」と呼ばれ、放蕩無頼な青春時代を送っていた、市川染五郎さん演じる銕三郎が描かれる。継母との確執から勘当され、博打と酒に溺れながらも、人としての情を失わず、人の道理から外れた悪は決して許さない銕三郎。

尾美さん演じる若き日の彦十は、そんな銕三郎と出会い、そこから、銕三郎が「鬼平」と呼ばれ活躍するまでの長い付き合いとなっていく。

「若き日の平蔵──無頼だった銕三郎に対して、彦十は『痺れるねえ』という感じで、憧れを持っているようなところがあります。

彦十は香具師上りの無頼者で、盗みに手を染めたこともあって、アンダーグラウンドな側面を持ちつつ、性格が明るい。彼のなかには、彼なりの『道を外しちゃいけない』という正義感もある。そのバランスがすごくチャーミングなんですよね。

彦十は平蔵にとっての相棒であり、良好な関係性を築いている人物です。彦十の幅広い側面を演じられるようにしないといけないなと思いながらやっています」

 

愛され続けるシリーズの魅力

横山小平次(駒木根葵汰)と長谷川銕三郎横山小平次(駒木根葵汰)と長谷川銕三郎

昭和、平成、そして令和と、長きにわたり多くの人々に愛されてきた「鬼平犯科帳」。尾美さんから見た作品の魅力とは何だろうか。

「原作が面白い。池波先生の小説に描かれる平蔵像は非常に魅力的です。さらに、作品に出てくる一人ひとりの職業や人となりがちゃんと描写されている。人々の心の機微の描かれ方も丁寧ですし、読んでいてその情景が思い浮かんでくる。

そして、小説が映像化された作品も、出演されている俳優さんの演技もいいんですよね。観ていて、作品の世界に入っていきやすいし、素晴らしい方が集まっている。

今回のシリーズに僕は後から加わりましたが、皆さんとお芝居をしていて、素晴らしい人たちばかりだなと改めて感じました」

同心・木村忠吾、密偵・相模の彦十と、2つの役から平蔵を見てきた尾美さん。平蔵の魅力は何と言っても正義感に溢れているところだという。

「『本所の銕』では、正義感を持った腕っぷしの強い人間として若き平蔵が描かれています。無頼でありながらも、筋が通っている。

そこから酸いも甘いも経験したことで、さまざまなことを嚙み分けることができるような大人に成長していって、『鬼平』と呼ばれるようになったと思えます。火付盗賊改方長官という立場で、いろんなことをできるようになるまでにさまざまなことがあったんだろうなと感じます。

かつて木村忠吾を演じていたときには、平蔵は、事件を解決する能力に長けていて、仕事のできる頼りがいのある上司でした。

多少のことは許してくれて、自分の話を分かってくれるような大らかな人ではありつつ、やはり上司と部下という立場なので、『長官はおっかない』という感じ。

一方で、今回彦十を演じてみると、見えてくる平蔵像が全く違う。僕は、彦十は平蔵の一番の子分だと思っていますが、平蔵は彦十から見てすごく魅力のある『親分』なんですよね。そういった、『親分』と『子分』の関係性も表現できていたらいいなと思います」

最後に、尾美さんに『歴史街道』の読者に向けて、シリーズの見どころをうかがった。

「作品に描かれることの全部が創作ではなく、歴史に基づいて書かれている部分も多いので、歴史好きの方が『鬼平犯科帳』を観ると、もっと面白く観られると思うんですよね。

また、このシリーズは、何回観ても面白い作品です。1回目では気づかなくとも、『この人、こんなことしていたんだ』といった気づきが何度もあるんですよね。

そして僕自身年を重ねて思うのですが、観る年齢によってもまた違った見方が出てくる。それもこのシリーズの魅力だと思うので、そういった面白さも感じていただきながら観ていただけたら嬉しいです」

 

「鬼平犯科帳 本所の銕」

●作品情報

「鬼平犯科帳 本所の銕」

【時代劇専門チャンネル】10月10日(土)ひる1時/よる7時ほか 独占初放送

【時代劇専門チャンネルNET】10月10日(土)ひる1時 独占配信スタート

 

原作︰池波正太郎『鬼平犯科帳』(文春文庫刊)

監督︰山下智彦 脚本︰大森寿美男 音楽︰吉俣 良

出演︰市川染五郎

尾美としのり 中島瑠菜 阿佐辰美 甲本雅裕/駒木根葵汰 北澤 響

黒沢あすか 松尾貴史/山田真歩 本宮泰風 山口馬木也

松本幸四郎

 

●あらすじ

京に赴いていた「鬼平」こと長谷川平蔵(松本幸四郎)と旧友・岸井左馬之助(山口馬木也)は、青春時代の出来事を思い出していた。それは平蔵がまだ銕三郎と名乗り、「本所の銕」と呼ばれ放蕩無頼な青春時代を送っていた頃──。博打と酒に溺れ、道場から足が遠のいていた銕三郎(市川染五郎)に、無頼を従えた悪御家人・横山小平次(駒木根葵汰)が近づいてくる。銕三郎は小平次を相手にしなかったものの、執念深い小平次は、銕三郎の後を付け回し、やがて銕三郎の周囲の人間にも近づき、その所業は一線を越え……。

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