カピトリーノ美術館(撮影:筆者)
ローマの街には、街角の碑文、教会の壁、噴水の銘文など、今も都市の中にラテン語が生き続けているーー高校2年生からラテン語の学習を始め、X(旧Twitter)などでラテン語のおもしろさを発信しているラテン語さん(東京古典学舎研究員)が、ローマの街から感じた歴史とは? その新著『今に生きるラテン語を求めて 「永遠の都」ローマ滞在記』では、カピトリーノ美術館を訪れた感慨を綴ります。
※本稿は、『今に生きるラテン語を求めて 「永遠の都」ローマ滞在記』(ラテン語さん著)より一部抜粋・編集したものです。
この美術館の名前は、同館が位置するカピトーリーヌス丘に由来する。古代には、この丘にローマの最高神ユッピテル(ジュピター)の神殿があった。アメリカ合衆国議会議事堂がある丘、あるいはアメリカ合衆国の連邦議会そのものをCapitol Hill と言うが、それは現在議事堂がある丘をトマス・ジェファソンがカピトーリーヌス丘にちなんで名づけたことに由来する。
美術館の前には、ミケランジェロが設計したカンピドリオ広場(Piazza del Campidoglio)が広がり、広場の中心にはマールクス・アウレーリウス・アントーニーヌス帝の騎馬像がある。広場にあるものはレプリカで、オリジナルの騎馬像は館内にある。
館内に入ると、入口付近の中庭にてコーンスタンティーヌス帝の巨像の頭部がいきなり見えた。古代ローマに関する本で、写真でよく見るものだ。自分がローマに来たのだとあらためて気づかされる。
さらに、建物内にはユッピテルの神殿の土台も見ることができる。「← Le fondazioni del Tempio di Giove」(←ユッピテル神殿の土台)という案内板に沿って歩くと、レンガで作られた、建造物の大きな土台が現れた。近代に建てられた建物の中に、古代ローマがたしかに息づいていた。
カピトリーノ美術館では、他にも古代ローマを感じられる場所がある。博物館の一棟「セナトーリオ宮」から入ることができるのが、紀元前78年に建てられた公文書館「タブラーリウム」だ。ここからはフォロ・ロマーノという遺跡を一望できる。古代に建てられた建物から古代遺跡を眺めるという、なんとも贅沢な体験ができた。
この博物館に来たからには、「カピトリーノの狼」の本物を見てみたい。2023年の『永遠の都ローマ展』で見たものは複製であり、本物はこの博物館に収蔵されている。この彫刻は、ローマの伝説上の建国者ロームルスとレムスを育てた狼を表現したものだと考えられている。
伝えられるところによれば、アルバ・ロンガの王ヌミトルは、弟であるアムーリウスに王位を簒奪されてしまう。その後、ヌミトルの娘であるレア・シルウィアが双子を生むと、将来自らの王位を脅かしかねない存在としてアムーリウスはこの双子をティベリス川に流すことを命じる。しかし、彼らは奇跡的に助かった。その後、ロームルスとレムスはオオカミに拾われ育てられ、成長した2人はアムーリウスを討ち、それまで幽閉されていた祖父ヌミトルも解放する。
カピトリーノの狼は、双子を育てた雌狼なのだ。この像が作られたのは紀元前5世紀と考えられており、狼の乳を飲む双子の赤子は15世紀以降に付け加えられたものだ。
実は、日本にもこの像のレプリカがある。1938年にイタリアから東京市に寄贈されたもので、日比谷公園で見ることができる。また、ゲーム『あつまれ どうぶつの森』に登場する「ぼせいあふれるちょうこく」のモデルにもなっているので、このゲームを通じて知った人もいるかもしれない。
更新:03月20日 00:05