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民衆の味方か、奴隷制の擁護者か? アメリカ初の庶民派大統領アンドリュー・ジャクソン

2025年01月24日 公開

宇山卓栄(​​​​​​​著述家)

アンドリュー・ジャクソン

建国から今日に至るまで、日本はもちろん、世界に多大な影響を与えてきたアメリカ。2025年1月には、トランプ大統領が誕生しますが、歴代の大統領をよく知らないという人も多いのではないでしょうか。

そこで、近現代史を読み解く際の鍵となるアメリカ大統領について、8回に分けて紹介しましょう。2回目となる今回は、第7代大統領ジャクソンを取り上げます。

 

一般民衆の味方として――第7代 アンドリュー・ジャクソン(在任1829~37年・民主党)

1820年代、男子普通選挙(白人のみ)が拡大し、一般民衆の支持を背景に、大統領に就任したのがジャクソンです。ジャクソンは西部農民の出身者で、米英戦争の際に活躍した将軍でした。

ジャクソンは自らを「普通の人」の代表者と位置付け、それまで選挙権を持っていた一部の土地所有者や富裕層ではなく、一般市民の利益を代弁する「ジャクソニアン・デモクラシー」と呼ばれる政治を展開していきます。 

ジャクソンは、自らを支持する後援会組織のメンバーを官職に就ける猟官制を実行します。当時も公職には少なくない報酬と利権があり、それを一部の富裕層が独占していました。

ジャクソンは猟官制により、選挙当選に功績のあった後援者を要所要所の公職に据え、中央から地方に至るまで、政府の人員を刷新しました。この猟官制は「スポイルズ・システム」とも呼ばれます。「スポイルズ」は「戦利品」を意味する語で、文字通り、事実上の論功行賞でした。

この人事制度は、それ以前のエスタブリッシュメント(支配層)を排斥する革命に匹敵する、大きな意味を持っていたのです。

ジャクソンらは、公職を配分することは一般民衆が政治に参画するための当然の権利である、と主張していました。また、ジャクソンはネイティブアメリカンに対する苛酷な排除を行ない、白人のための新たな土地を獲得していきました。

ジャクソンを支持する党派は民主党で、一方、彼らの政治手法をポピュリズムとして批判し、対立した党派が国民共和党です。元々、唯一の政党として民主共和党が存在していましたが、そこから両派が分裂し、ジャクソンの時代に、今日に繫がる二大政党政治が確立したのです。

国民共和党は、ジャクソンの前の大統領であったジョン・クィンシー・アダムズやその支持者たちが1824年につくった党派で、民主党と激しく対立しました。しかしその後、ジャクソン派優位の中で、内部対立や離党者などを出し、ホイッグ党に吸収されて組織改編。さらに、ホイッグ党の統制力も弱まると、1854年、新たに共和党が結成されます。

ジャクソンは一般民衆の味方として振る舞いましたが、自身は30代で既に、広大な農園と数百人の黒人奴隷を所有するほど、農業経営者として成功していました。

 

【宇山卓栄(うやま・たくえい)】
著述家。昭和50年(1975)、大阪府生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、現在に至る。テレビ、ラジオ、雑誌など各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説している。著書に『「民族」で読み解く世界史』『「宗教」で読み解く世界史』などがある。

 

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