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新たな「鬼平犯科帳」の幕開け! 豪華キャストが語る一大プロジェクトへの意気込み

2023年12月29日 公開

歴史街道編集部

鬼平犯科帳

時代劇ファンならずとも、胸躍るような一大映像プロジェクトが始まる。

池波正太郎の生誕100年を記念し、『鬼平犯科帳』が、歌舞伎俳優・松本幸四郎を主演に迎え、テレビスペシャル1作品、劇場版1作品、連続シリーズ2作品(テレビドラマ)の4作品が制作されることとなったのだ。

その記念すべき第一弾となるテレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」が、2024年1月8日(月・祝)昼1時~/夜7時~(同日2回放送)に、「時代劇専門チャンネル」で放送されることとなり、さきごろ、その完成披露試写会が開催された。

豪華キャストが登壇した会の模様を、歴史街道編集部がおとどけしましょう!

 

『鬼平犯科帳』完成披露試写会の模様

松本幸四郎

まず、大きな拍手で迎えられたのは、鬼平こと長谷川平蔵を演じた主演の松本幸四郎さん。つづいて、若き日の鬼平(長谷川銕三郎)を演じた市川染五郎さんが登壇する。

そして大きな拍手とともに、サプライズとして松平健さんが姿を見せる。松平さんは、松岡重兵衛という銕三郎の恩師であり、鬼平に立ちはだかる役どころだ。

三人が揃うと、一人ひとり、その作品に対する思いを語っていく。

「松本幸四郎です。世界一の職人の集まる現場で、素敵に輝いている役者さんと、長谷川平蔵を演じさせていただきました。この作品が一人でも多くの方にご覧いただけるよう、自信をもってみなさまにおとどけします」

「市川染五郎です。自分もこの作品を拝見させていただいて、新しい鬼平、新時代の時代劇が誕生したなと感じました。そういう作品に携わらせていただいて、とても嬉しく思います」

「松岡重兵衛役を演じさせていただいた松平健です。ただいま拝見しましたけど、本当にいい作品にできあがって、とても嬉しくおもっています。これからの時代劇を、幸四郎さん筆頭に、がんばってきわめていっていただけたらと思います」

 

「誰よりも長谷川平蔵を愛していることでは負けない」

三人の挨拶が終わると、今回のプロジェクトにおけるキャストの全貌が発表される。

2024年5月10日(金)公開の劇場版「鬼平犯科帳 血闘」には、北村有起哉さん、柄本明さん、そして中井貴一さん。

2024年5月以降に「時代劇専門チャンネル」で放送されるテレビシリーズには、和田聰宏さん、古田新太さん、橋爪功さん。まさに豪華キャストのそろい踏みだ。

この錚々たるキャストについて、松本幸四郎さんはこう語る。

「そうですね。濃いですね。みなさま、素敵な方ばかりで、その方々と一緒にお芝居できるというのは本当に幸せに思っております。

ただわたくしは、『血闘』をはじめ、おかしらですので、真正面からうけとめて、そしてそれを返すという長谷川平蔵を演じるうえで、とにかくぶれずに、監督はじめ、みなさんを信じて、一生懸命集中して、進めさせていただきました。本当に刺激し合って、幸せな現場でした」

ところで、長谷川平蔵といえば、松本幸四郎さんの祖父・松本白鸚(初代)さん、叔父・中村吉右衛門さんが演じたことでも有名だ。それを受け継ぐものとして、幸四郎さんは何を思ったのだろうか。

「わたくしは、叔父の鬼平犯科帳をリアルタイムで見ていた人間ですけれども、その素敵なかっこよさ、ふところの大きさを感じました。そして祖父のはビデオで見ましたけれども、どの作品を見ても、面白いな、かっこいいなと、見終わった時には思ってしまう。その気持ちをもって、この撮影に臨もうと思いました。

自分流とか、また新たな、違うものを――ということではなく、それだけのものを、素敵さ、素晴らしさをいっぱい感じて、そして演じさせていただきました。

実際、撮影では叔父がつかっていた煙草入れとか(幸四郎さん、思いがこみ上げ、ことばが詰まる)......それはお守りということではなく、一番かっこいい煙草入れでしたから、それを使わせていただきました。

まあ、『新たな』というよりは、『誰よりも長谷川平蔵を愛していることでは負けないぞ』という気持ちで、この作品をつとめさせていただきました」

 

父子で一役を演じてみて...

市川染五郎

この作品では、長谷川平蔵がまだ若く、『本所の銕』と呼ばれていた長谷川銕三郎時代が描かれていく。それについて市川染五郎さんはこう語る。

「今までの映像作品では、あまりフォーカスされてこなかった時代なんですけれど、吉右衛門のおじさまのシリーズでも、本当に少しなんですけれども、おじさまご自身で銕三郎を演じられているシーンがあります。

そこから吸収できることは全て吸収しようという思いで、撮影所に向かうまでの間だったり、待ち時間であったり、毎回撮影に入る前には、おじさまのシーンを見て、そのおじさまの銕三郎を自分に沁み込ませるつもりで、役作りをしました。

また、やはり銕三郎の真っ直ぐさと、若いからこその危なっかしさというかギラギラした感じを出せればいいなと思い、演じました」

松本幸四郎さんと染五郎さんは、親子で一役を演じることになるが、事前に相談などはしたのだろうか。

「ない...」と幸四郎さんが答えると、会場から笑いが起きる。

「ただ、銕三郎のああいう人生があったからこそ、長谷川平蔵というものがあったと思うので、それはもうそれぞれで膨らますという感じでしょうね。似てましたかね?」と会場に問いかけると、今度は拍手が。

一方、染五郎さんはというと......。

「そうですね。擦り合わせ的なことはなかったですけど、こまかい小道具の持ち方などは父から教わったり、自分でも父の撮影している現場に行ったりとかしました。

また、銕三郎時代と平蔵時代の同じシチュエーションでリンクする場面があるんですが、それを父のほうが先に撮影していたら、それをまず見させていただいてから撮影にのぞんだりしました。

もちろん、吉右衛門のおじさまの銕三郎というのも参考にさせていただいた部分も本当に大きいですけれど、あくまで今回は、父の演じている平蔵の若い頃ということですので、演じている最中は、それに徹しました」

 

松平健さんが語る『鬼平犯科帳』への思い

松平健

松平健さんは、過去にも中村吉右衛門さんの『鬼平犯科帳』シリーズに出演しているが、今回の作品ではどんな思いを抱いたのだろうか。

「そうですね。私の撮影の初日は、川のそばを歩いている平蔵を、橋の上から見るところだったんですね。そうしましたら、着流しで歩いている幸四郎さんの姿が、吉右衛門さんとダブるような風格がありまして、さすがだなと思いました。

今回はすごい若い鬼平になりましたけれども、その分、やっぱりパワーありますね」

対する幸四郎さんは、松平さんに対して「本当に素敵でかっこいいと思いましたし、一騎打ちの場面は、時間的には長くはないですが、丸一日一緒にいたかのような濃さのある時間帯でした。本当に幸せです」と感謝を述べる。

ただ、松平さん演じる重兵衛は、染五郎さんにとっては、怖い役どころのようだ。

「自分は松岡(重兵衛)先生にコテンパンにやられることが多かったんですけれども、うーん、やっぱり役として、本当にこわかったです(会場から笑いが起きる)。

道場で松岡先生に稽古をつけてもらう場面があるんですが、殺陣の息というか間合いというか、貴重な経験をさせていただきました」

 

『長谷川平蔵』の名乗り

『鬼平犯科帳』といえば、「火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた) 長谷川平蔵」という名乗りのシーンが有名だが、幸四郎さんはどんな気持ちで演じたのだろうか。

「叔父の『長谷川平蔵である』という言葉が印象に強いかと思いますし、私もそうですが、それは、『長谷川平蔵』と言い切るという結論に至りました。

火付盗賊改方ですので、いってみれば凶悪犯担当みたいな面があるので、その分、本当に力強さ、勢いというのは突出している部隊だと思うんですね。

その中でも、長谷川平蔵は先頭をきって突っ込んでいく男だったと思います。そういう中で、まずは『長谷川平蔵』と言い切ることが、この作品では一番ではないかと思いました」

「ただ」と、幸四郎さんが続ける。

「初めて扮装した時には、映画村に行ったような感覚で、『鬼平の恰好している!』という気持ちがあったのですが、『そうではない、そうではない』と、『自分は長谷川平蔵』と念じるように、この扮装を自分に沁み込ませるようにして、そしてカメラの前に立とうと。

最初に扮装したときは、本当に誰とも話さず一人でいようと思ったくらい、特別な扮装だと思いました」

 

時代劇に込めた想い

鬼平犯科帳

完成披露試写会の最後に、三人が改めて、時代劇に込めた想いを、会場に語りかける。

まずは松平健さん。

「いま、時代劇というのはテレビでも少なくなっていますけれども、幸四郎さんはじめ若手の方が、こうして時代劇を拡げていってくれたらなと、これから私も期待して応援していきたいと思っております」

つづいて市川染五郎さん。

「松平さんがおっしゃったように、時代劇というものが一昔前に比べると、触れる機会が少なくなっていると思うんですけど、やっぱり若い世代の者としても、ずっと残っていてほしいジャンルでもありますので、出演させていただく側の若い世代の人間としても、頑張って残していきたいと思っていますので、ぜひ、若い世代のかたにも鬼平を見ていただきたいです。

今までイメージしていた時代劇とはまた違った新しさを感じる作品だと思いますので、いろんな世代の方に見ていただきたいです」

そして、最後を締めくくるのは、松本幸四郎さん。

「いま、江戸生まれの方はいらっしゃいません。ですので、実際にあった江戸時代を描くうえで、江戸時代をつくれる時代が今こそ来たと思っています。そういう意味で、時代劇は江戸時代をつくるファンタジーで、人の想像力を十分に活かせるジャンルです。

また、色々な物がなかったり、便利さのない時代だと思いますが、でも、人と人が会うことによって、ドラマが生まれていく。それを色濃く描くことのできる最適のジャンルだと思っています。

この『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』も人間ドラマを感じていただけるような作品に仕上がり、鬼平犯科帳としても、新たな鬼平犯科帳が誕生したと思っております。

ぜひとも、人間ドラマが描かれたファンタジーをひとりでも多くの方に楽しんでいただけることを願っています。いま、次の作品も撮影中です。次もこれ以上のものをと思って、一丸となってつくっておりますので、まずはこの作品を一人でも多くの方に楽しんでいただければと思っております」

(作品情報)
『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』については、下記をご参照ください。
https://www.jidaigeki.com/onihei/?utm_source=ad&utm_medium=Listing-Y&utm_campaign=honjo_20231207&yclid=YSS.1001315210.EAIaIQobChMIlcCY1vudgwMVo8NMAh3bwAEYEAAYASAAEgLqrPD_BwE

 

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