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幕末の外交を支えた「西洋料理人」草野丈吉...五代友厚にも認められた手腕とは?

2023年04月26日 公開

朝井まかて(作家)

 

町人が国を考え、尽くすということ

――これほど登場人物が多いと、一人ひとりの人物造形に苦労されたのでは。

【朝井】時代の変わり目ですから、書き甲斐がありました。幕末は日々趨勢が変わりますし、明治になってからも政情は非常に不安定です。そのぶん、スケールの大きな人が出てくる。

丈吉は政治家にはならなかった人ですが、自由亭の料理を通じて日本の外交を支えました。結果的にではなく、意識的にそれをやってのけた人です。

親しくしていた五代友厚の影響が大きかったのですが、そもそも大阪は旧幕時代から天下を支えているという町人意識が強い土地ですし、明治は官民が一体とならなければ国が立ちゆきませんでした。

おいしい料理を食し、酌み交わしながら互いを理解し、それぞれの望みを果たす。時には引き、時にはせり勝つ。丈吉はその場を演出し、料理人たる本分を尽くすことで「公」を支えました。

『朝星夜星』は、そんな丈吉と妻・ゆき、そして家族の物語です。宴の西洋料理だけでなく家庭料理もたくさん出てきますので、そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しいです。

 

著者紹介

朝井まかて(あさい・まかて)

作家

1959年、大阪府生まれ。甲南女子大学文学部卒。2008年、小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。13年、『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞、14年、同作で直木賞、16年、『眩』で中山義秀文学賞、18年、『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞、21年、『類』で柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に、『先生のお庭番』『グッドバイ』『ボタニカ』などがある。

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