2016年03月17日 公開
2023年10月04日 更新
「一言にして云えば現代日本の開化は皮相上滑りの開化であると云う事に帰着するのである」。文豪・夏目漱石が明治44年(1911)8月に和歌山で行なった講演「現代日本の開化」の一節です。
この講演は「日本近代思想史の記念碑」とも称され、漱石の思想を最もよく語る重要なものと評価されています。
「戦争以後一等国になったんだという高慢な声は随所に聞くようである。なかなか気楽な見方をすればできるものだと思います。ではどうしてこの急場を切り抜けるかと質問されても、前申した通り私には名案も何もない。ただできるだけ神経衰弱に罹〈かか〉らない程度において、内発的に変化して行くが好かろうというような体裁の好いことを言うよりほかに仕方がない」。
明治を代表する知識人が、明治日本と日本人をどう見ていたのか、今接しても非常に興味深く、考えさせられる内容といえるでしょう。
講演会場となったのは、旧和歌山県議会議事堂。和歌山市一番丁に建っていた、和風意匠の大きな木造建築でした。
そして、実はこの議事堂、今も目にすることができます。明治時代に各県で建てられた県議会議事堂のほとんどが失われている中、旧和歌山県議会議事堂は、現存する和風の木造議事堂では最も古い貴重なものとして、平成17年(2005)に和歌山県有形文化財に指定されました。
さらに今年、平成28年(2016)の春、同議事堂は当時の姿に復原整備され、新たな文化観光施設として、一般公開されます。同議事堂の歴史的背景と見所などを紹介してみましょう。
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更新:12月04日 00:05