「好きな歴史・時代小説」は以前扱ったことがあるものの、今回のテーマは小説家、それも執筆ジャンル問わず。票が割れに割れて収拾がつかなかったらどうしよう……と恐れていよしたが、なんとかまとまり安心しました。とはいえ、現役作家・故人ともに多彩な名前が挙がり、集計作業は非常に楽しいものでした。
では、ランキングをご紹介しましょう。
第1位 夏目漱石 26.0%
第2位 芥川龍之介 6.7%
第3位 太宰治 6.3%
第4位 司馬遼太郎 5.5%
第5位 森鴎外 2.6%
第6位 川端康成 2.5%
第7位 宮澤賢治 2.2%
第8位 三島由紀夫 1.8%
第9位 池波正太郎 1.4%
第10位 松本清張 1.2%
1位は、さすが元・紙幣の顔というべきか、夏目漱石。文豪の代名詞は、名実ともに日本人の心に住み続ける大作家であるようです。昨年は『こころ』刊行百周年を記念して、初版に限いりなく近いデザインの新装版も発売されました。「『こころ』を読んで、こんなにも奥が深く、人間の弱いところや鬱々としたところ、優しさなどを表現できるのかと感動した」(10代、男性)、「漱石を読んで人生観がガラリと変わった」(10代、男性)、「文学に目覚めました」(40代、男性)。彼の魅力は、「時代が変わっても色褪せない文章」つ(20代、男性)や「今も心がときめく、惹かれる作品があり、何度読み返しても飽きることがない」(50代、女性)普遍性にあるようです。だからこそ、「同じ時代を生きて新作を待ちたかった」(20代、女性)。さらに「ペンネームの由来が気に入っている」(70代、男性)というコメントも!
2位も教科書の常連、芥川龍之介。その洞察力と構成力は多くの読者をひきつけています。「人間の心の奥底のエゴや欲望を、時に優しく、時にえぐりだすように見事に言葉で表現している」(30代、女性)、「少ない字数で、余すところなく人間の醜さや愛しいところを伝える表現力」(20代、女性)、「とにかく文章が洗練され、無駄がない」(40代、男性)。
3位の太宰治は、作品と彼自身の人間性とが殊更に重ねられる作家です。「破天荒で飾らなく、自分自身の生き方に対していつも劣等感を持っている天才」(50代、男性)、「人間の潜在的な闇や本能をありのままに書いている」(20代、男性)。他方、「太宰の魅力は女性が主役の作品にある。『葉桜と魔笛』『女生徒』など可愛くてたまらない女性が沢山」(20代、女性)というご意見も。
4位は、歴史小説の大家、司馬遼太郎。「まるで本人がそばに居合わせたかのような臨場感がたまりません」(40代、男性)、「『以下、余談ながら』は歴史の奥深さを教えてもらった、名フレーズです」(30代、男性)。
5位の森鴎外は、格調高い文体に言及する方が多かった一方、「作品の素晴らしさはもちろんですが、鴎外その人の人生にも惹かれる」(40代、女性)という声も。
6位以下は表の通りです。少数票たったものと併せて、興味深いコメントを頂戴した「文豪」たちをご紹介します。
・宮澤賢治「優しさや温かさ、切なさなどを心の深いところに落としていく文章。どこまでも優しい人だったのだろう」(30代、女性)
・三島由紀夫「日本語表現の美しさを認識させられる」(50代、女性)
・池波正太郎「特にヒーローを描いていない小説でも、登場人物の日常が目に浮かぶ描写が好き」(40代、女性)
・江戸川乱歩「薄暗い部屋の隅で読んでいるような錯覚を呼び起こす。不思議で妖しい魅力」(30代、女性)
・吉川英治「『宮本武蔵』は座右の書で、テンションが下がると読み返す」(50代、男性)
・京極夏彦「読みものといえば『ジャンプ』たった私を、えげつないほどの表現力で小説の世界へ引きずり込んでくれた」(40代、男性)
・山田風太郎「『忍法帖』シリーズで生まれて初めて歴史がおむしろいと思った」(40代、女性)
・エミリー・ブロンテ「イギリスの田舎育ちの女性が、己の想像力だけで『嵐が丘』という心をかきむしられるような小説を書き上げた、その力に惹かれる」(20代、女性)
・井原西鶴「バラエティに富んだ作品群。リズミカルで明快な文章。読者を楽しませることに徹したテクニックと作風は素晴らしい。登場人物の行動や感情の機微は、現代にも通じるものがある」(60代、男性)
・田山花袋「人生で最初に読んだのが『田舎教師』」(60代、男性)
・立原正秋「日本の文化のわびさびの真髄を極めた作家」(60代、女性)
誌面の都合上載せられなかった、こだわりのご意見の数々も、すべて拝読しました。
ありがとうございました。
更新:11月23日 00:05