2021年07月27日 公開
アメリカは独立後、地主階級が農業経済を中心に国家経営を行ないます。
タバコ、綿、藍などの商品作物が主力で、ヨーロッパ向けに輸出されました。南部地域を中心にそれらの大農場が編成され、西アフリカから来た黒人奴隷を労働力として酷使したのです。
裕福な大地主たちは民主党を組織し、大きな政治的な力を持ち、第3代大統領トマス・ジェファソン以降の歴代大統領を輩出します。
1850年代、ヨーロッパで本格化していた産業革命がアメリカにも波及し、工業化が進みます。そして、経済力を身に付けたブルジョワ商工業者が台頭し、南部の地主と社会的に対立していきます。
アメリカ北部は南部と比べ、土地が痩せて農業には不向きでしたが、工業化で急速に発展しました。
それまでアメリカの政治は、肥沃な南部の地主階級に牛耳られていましたが、北部の商工業者がその勢力を伸長させるにつれ、南部勢力の権力と権威に挑むようになったのです。北部の商工業者は南部の民主党勢力に対抗するため、共和党を組織します。
両勢力は貿易を巡る利権や奴隷問題などで激しく対立し、ついに南北戦争(1861〜1865年)が起こります。最終的に北部が勝利し、ブルジョワ商工業者が地主などの旧勢力を抑え込みました。アメリカ政治の主導権を握り、近代工業化を推進していきます。
南北戦争は、イギリスやフランスなどで起こった近代ブルジョワ市民革命に匹敵するものであり、アメリカ社会を近代化させる分岐点となりました。
アメリカの近代工業化は、重工業によってさらに推進されます。1880年代には、石油、鉄鋼、電気、化学を中心とした工業生産が、イギリスを抜いて世界一の地位を占めるようになります。この間、石油のロックフェラー、鉄鋼のカーネギー、金融のモルガンなど、一代で財を築く大財閥が現われます。
政界では、共和党が優勢を誇り、南北戦争で北軍を勝利に導いたグラント将軍が共和党から大統領選挙に立候補し大勝し、1869年から1877年まで2期にわたり、大統領をつとめます。しかし、政界と産業界が癒着し、汚職が続発します。高度経済成長を背景に、拝金主義が横行し、「金ぴか時代」と呼ばれる時期でした。
アメリカの発展とともに、イギリスやフランスの地位が相対的に低下していきます。イギリスやフランスは海外に広大な植民地を持ち、そこから、綿花などの原料を輸入して、加工・製品化する軽工業を主な産業にしていました。
これに対し、アメリカの重工業は、軽工業よりもはるかに利益率が高かったのです。19世紀前半以来、イギリスやフランスでは、軽工業で成功した中小事業者が無数におり、彼らに既得権益があったことが、巨大な資本を必要とする重工業へ転換することの阻害要因になっていました。
アメリカは南北戦争後、最初から重工業に力点を置いた工業化を推進し、組織的な合理生産のシステムを構築することに成功しました。そして、一気に世界を牽引していく大国となっていったのです。
更新:11月22日 00:05