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Q&Aで探る「新選組の真実」

2014年07月07日 公開
2015年02月06日 更新

菊地明(歴史作家)

『歴史街道』2014年7月号[総力特集]新撰組と池田屋事件 より》

映画やドラマなどでさまざまに描かれる隊服のデザインは、どれが正しいのか? 
新選組の面々も尊王攘夷の志を持っていた?
剣客揃いの隊内で、特に強かったのは誰?
最新の研究を踏まえつつ、新選組の基本知識をQ&Aで紹介してみよう。

 

新選組は何を目的として、いつ結成されたのですか?

 正式に「新選組」という名前になったのは、近藤勇らが京へ着いた文久3年(1863)2月23日から約半年後の8月18日の政変に出動し、その働きが認められて隊名を拝領した9月下旬のことです。それまでは「壬生浪士組」と呼ばれていました。

 壬生浪士組が結成されたのは、3月の半ば頃です。上洛する将軍徳川家茂の警護が目的でした。近藤らは幕府が江戸で行なった浪士組募集に応じて上洛し、京の西郊の壬生村に入ります。ところが、浪士組の中心人物であった庄内藩出身の清河八郎が、攘夷の先駆けになることを主張し、同調する者を引き連れて江戸に戻ってしまいました。

 近藤らも攘夷を志していましたが、本来の目的である将軍警護を全うするために京に留まります。この時、残留を決めたのは、近藤率いる天然理心流・試衛館の門人を中心としたグループと、水戸藩出身の芹沢鴨を中心としたグループの計17名でした。3月12日に彼らは会津藩のお預かりとなり、新選組の前身となる組織がつくられていきます。

 

隊士はどのような身分の人たちでしたか?

 当初「壬生浪士組」と称したように、組織を構成したのは基本的には浪士ですが、新選組には、武士以外の身分の人たちも参加することができました。

 というのも、そもそも武士は主君に仕える存在ですから、主君を持たない浪士は、本来的な意味での武士ではありません。町人であろうが農民であろうが、刀を差して武士のような格好をしていたら、立派な「浪士」になるわけです。

 そのため、新選組では身分や年齢は問わず、応募資格は当時の一般的な世論だった「尊王攘夷」の有志という一点でした。つまり、元気でやる気があれば誰でもいいということで、隊士を募ったのです。

 ただ、入隊後は身を危険に哂す任務にあたるわけですから、それに見合う武芸がなければ務まりません。そうした意味では、決して安易に入隊できるものではなかったでしょう。

 

尊王攘夷の志を持っていた新選組が、長州藩などの尊攘派と対立するのはなぜですか?

 芹沢鴨や近藤勇らが率いた新選組は、朝廷を敬い、外国勢力に対抗することを目指す尊王攘夷の志を持っていました。一方で、敵対する長州藩などの志士も同じく尊王攘夷を掲げています。にもかかわらず、新選組が尊攘派と敵対し、彼らを取り締まったのは、一見矛盾しているように思えます。

 しかし、そこには攘夷を行なうにあたり、朝廷と幕府の立場をどのように捉えるかという点で、考え方に大きな違いがありました。

 新選組はあくまで従来通りの幕府を主体とした政治運営を目指し、将軍が先頭に立って攘夷を行なう考え方を支持していました。これは、「佐幕」という立場です。

 ところが、外様として政権に参画できなかった長州藩などの攘夷派は、天皇親政の下で幕府や諸藩が一丸となり、諸外国に対抗していくべきと考えていました。これは後に「討幕」を目指すまでに発展しますが、尊王攘夷活動が盛り上がり始めた文久年間(1861~1863)頃では、まだ幕藩体制を覆すことまでは考えられておらず、せいぜい徳川家による独裁体制を崩そうというものでした。つまり、「倒幕」です。

 こうした考え方の萌芽は、江戸中期に発展した国学にあります。日本を治めるのは天皇であり、将軍は統治を委任された存在にすぎないということが認識され始めていたのです。

 そこへ嘉永6年(1853)の黒船来航の際に、対応に苦慮した老中首座の阿部正弘が、政権外にあった御三家や外様大名にも広く意見を求めたことで、外交は朝廷の許可を得るべきとする考え方が出てきました。そして、条約勅許だけでなく、政権そのものを朝廷が担うべきとする長州藩などの急進的な尊王攘夷運動へと発展し、あくまで幕府を主体と考える佐幕派の新選組と対立することになるのです。

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