2020年01月22日 公開
2021年08月17日 更新
歴史好きのアイドルとして知られ、歴史番組のMCも務める乃木坂46の山崎怜奈さん。「オススメの歴史本」として、大ヒットしたコミック『JIN-仁-』を手掛けた村上もとか氏の最新作、『侠医冬馬(きょうい とうま)』の魅力を紹介してもらった。
写真撮影:まるやゆういち
──『侠医冬馬』は、幕末の商都・大坂(現・大阪)を舞台に、先進医術を学ぶ松前藩の青年・松崎冬馬が、剣とメスを振るいながら、時代を切り開いていく歴史マンガです。
福澤諭吉、村田蔵六(大村益次郎)、緒方洪庵らと出会いながら成長していく青春物語としても魅力的ですが、幕末好きの山崎さんとしては、読んでみていかがでしたか。
山崎 村上もとか先生の『JIN-仁-』を読んでいたので、幕末と医療、久しぶりだなぁと思いつつ、楽しく読ませてもらっています。
主人公の松崎冬馬がとても魅力的で、現代人に勇気を与えてくれる存在なのですが、その前に、歴史好きとして嬉しかったポイントについて、お話ししていいですか?
大坂にやってきた冬馬は、華岡青洲のながれをくむ合水堂で医術を学び、やがて緒方洪庵の適塾にも通うようになります。
私は適塾にとても関心があって、登場しただけでも嬉しいのですが、適塾にある蘭和辞典・ヅーフ辞書もさりげなく描かれていて、その描写の細やかさに「おお!ヅーフ」と感激しました(笑)。
しかも、舞台は大坂。江戸が 政をする場なら、大坂は〝物事を発展させるためのエネルギーを持つ場〟ではないでしょうか。
商い、学問、また、医術にしても、大坂という街は何事かに没頭できるエネルギーを持っているように感じます。
この作品を読んでいて、医術に懸けた当時の人々の想いや情熱について、多くの人に知ってもらいたいなと思いました。
──冬馬をどんな人物と捉えていますか?
山崎 信念のもとに、二つのことを成し遂げようとする人、と言えるのではないでしょうか。
冬馬は合水堂と適塾の両方で学んでいきます。つまり日本の医術と西洋の医術、両方を学ぶんですね。
ふつうは、二つのことを同時に修めようとすれば、力を50パーセントずつにわけて……となりそうですよね。
でも、冬馬は違います。人の命を救うという信念があって、そのために両方に全力をもって取り組んでいくのです。私も乃木坂46の活動と、大学の学びを両立させようとしていますので、とてもシンパシーを感じました。
──剣術にも優れていますね?
山崎 そうなんです。でも、強いだけの人物ではありません。
適塾の塾頭となった福澤諭吉が、反発する塾生と一触即発の事態になるのですが、冬馬は張り詰めた空気をうまく和ませ、収めてしまうのです。私の好きなシーンの一つですね。
また、蝦夷地でアイヌへの種痘事業に携わった際には、命の危険に晒されながらも、何とかアイヌの子どもを救おうとします。
こちらは感動的なシーンですが、二つの場面からは、冬馬の強さだけでなく、度量の大きさや優しさも伝わってきました。
その度量と優しさを兼ね備えたところは、「自分の境遇を、誰かのせいにしないこと」から生み出されたものだと思います。
冬馬の出生や実家での立場は、誰かを恨んでしまいたくなるようなもの。けれども彼は、それを受け入れたうえで、物事をプラスに考え、前向きに道を進んでいく。そういうところは、現代の私たちが読んでいて、励まされるところだと思います。
──冬馬以外の注目の人物は?
山崎 福井藩の橋本左内です!
私、好きなんですよ。早世が惜しまれます……。適塾の先輩である村田蔵六の三枚目ぶりも面白いですし、幕臣の榎本武揚、山岡鉄舟といった有名人も出てきます。福島元寿という謎めいた女性外科医も登場してきて、これから物語がどう展開するのか、とても楽しみですね。
◆発行:集英社(「グランドジャンプ」にて連載中)
◆定価:本体(各)600円(税別)
『侠医冬馬』の試し読みができます! http://grandjump.shueisha.co.jp/manga/touma.html
更新:12月10日 00:05