2019年09月10日 公開
2023年10月04日 更新
3年に一度、世界の博物館関係者が集まる国際大会があるのをご存じだろうか。
ミュージアムの発展のために1946年に創設された組織、国際博物館会議(通称ICOM)。今年、その国際大会の開催地に京都が選ばれた。日本では初めてである。およそ140の国と地域の博物館関係者が集結し、国立京都国際会館で9月2日から3日間、博物館の展示がなされた。
展示会でひときわ人気を博していたのが台湾ブースだ。台湾本土と博物館の紹介を目的としたメイン展示と、国内最大の博物館・国立故宮博物院のテーマ展示に分かれており、洗練されたデザインは来場者を魅了した。
メイン展示は、台湾の自然の豊かさをイメージした「博物の島」がコンセプト。現代アーティスト林惺嶽(リンシンユエ)氏の、台湾の山々が描かれた作品『受大地祝福的山』をバックに、台湾にある博物館の一部を紹介している。
博物館というと芸術作品をイメージしがちだが、そうではない。このメイン展示も環境問題、人権、コミュニティ、そして文化に焦点を当てた4つのコーナーに区切られており、いかに博物館が社会と密接に関わっているかを教えてくれている。
そして隣の国立故宮博物院のテーマ展示では、今回の京都大会のテーマ「伝統を未来へ」を象徴するように、博物院が誇る伝統美術品を最先端技術のARやVRで再現する試みがなされていた。
展示のイメージは「清王朝時代の玩具箱」。外観からは何が入っているのか分からないが、引き出しや入れ子のように、中から玩具(美術品)が現われるという。
ブースには実際の絵画や工芸品などは置かれておらず、たしかに外観からは何があるか分からない。そこに置かれているのは、8K映像が映し出されるテレビ画面やタブレット。タブレットを持ち上げ、かざしてみると、画面には18世紀の画家ジュゼッペ・カスティリオーネの代表作『瓶花』が3Dで現れる。
また、ブースでは唐時代の書家・懐素(かいそ)の作品『自叙帖』をイメージしたダンスパフォーマンスも披露され、来場者の注目を浴びていた。
一般的に、博物館は鑑賞の場と捉えられるが、そこではいかに博物館を「体験の場」にできるかを追求しているように感じた。VRコーナーでは、専用ゴーグルを装着すると、北宋時代の画家・張択端(ちょうたくたん)の作品『清明上河図』で描かれた開封の都を体感できる。
台湾の博物館が目指す姿とは何か。今回の台湾ブースの責任者である中華民国博物館学会理事長・蕭宗煌氏に話を伺った。
蕭宗煌氏(右)、通訳を担当する博物館研究所の黄貞燕氏(左)
「台湾では近年、アジアで初めて同性婚を認める法律ができるなど、常に時代に合わせた変化を求める風潮があります。
日本統治時代の1908年、台湾に初めて台湾総督府博物館(現在の国立台湾博物館)が設立されました。今では700を超える博物館がありますが、時代の変化にともない、博物館も展示の手法を発展させてきました。
自然科学博物館は昨今の環境問題を取り上げ、人権博物館はこれまで語られなかった歴史を直視し、過去を省みながら未来に活かす内容を、そして国立故宮博物院は場所を問わず古代からの中国の美術品を体験できる展示を……。
従来は知識を並べるだけの展示でしたが、それを改め、今はいかに現代に生きる人々に訴えかけることができるかを、各博物館の職員が考えながら展示を工夫しています。
歴史や伝統を重んじつつ、いかに未来へ繋ぐことができるか。我々の永遠のテーマです」
博物館が所蔵する貴重な文化財をどう生かしていくのか。それは台湾だけなく、日本においても同じ課題かもしれない。
◆住所:中華民国台湾台北市士林区至善路2段221号
◆開館時間:
<展覧館>8:30~18:30 ※金・土のみ18:30~21:00の夜間営業あり。年中無休。
<図書文献館>9:00~17:00 ※日・祝日休館
<張大千先生記念館>要予約
<至善園>【4月~10月】8:30~18:30、【11月~3月】8:30~17:30 ※月・定休
更新:12月10日 00:05