2013年11月05日 公開
2022年11月14日 更新
10月号(9月4日発売)で「次に『世界文化遺産』になってほしいのはどこか?』というお題への投票を募集しましたが、折しも9月17日、政府は「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦すると発表しました。登録の可否は2015年に審査される予定です。
ちなみに今回、有効投票数で1200を超える皆様から寄せられた結果では、「明治日本の産業革命遺産」の人気は第10位でした(※投票募集時は別の名称でしたが、この8月に「明治~」に変更されました)。各国の推薦枠は年1件。次回推すべきは?
では、結果発表!
1位 武家の古都・鎌倉 神奈川県
2位 飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群 奈良県
3位 平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-(拡張) 岩手県
4位 長崎の教会群とキリスト教関連遺産 長崎県
5位 彦根城 滋賀県
6位 北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群 北海道・青森・岩手・秋田県
7位 富岡製糸場と絹産業遺産群 群馬県
8位 金を中心とする佐渡鉱山の遺産群 新潟県
9位 百舌鳥・古市古墳群 大阪府
10位 明治日本の産業革命遺産-九州・山口と関連地域 福岡・佐賀.長崎・熊本・鹿児島・山口・岩手・静岡県
11位 国立西洋美術館 東京都
12位 宗像・沖ノ島と関連遺産群 福岡県
ランキング堂々の1位と、残念ながら11位、12位となった各担当部署の方々に、投票結果への感想を聞きました。
まずは1位の「鎌倉」です。鎌倉といえば、今年4月に世界遺産委員会諮問機関のイコモス(国際記念物遺跡会議)から「社寺等で証明される武家の精神的・文化的な側面は評価されるものの、それ以外は物的証拠が不十分」と勧告されて、再起を期すべく推薦が取り下げられたのは記憶に新しいところ。鎌倉市の世界遺産推進登録ご担当の吉田さんは、こう語ります。
「『鎌倉』に対する期待の声を大変ありかたく思います。再挑戦を目指す鎌倉にとって勇気づけられる思いです。世界遺産は、現地を訪れたことのない異文化に属する専門家が書類審査で判定します。鎌倉の魅力は、800
年の刻を超えた『武家文化の醸し出す気配』。これをどう世界に伝えるかが課題です。コンセプトや構成資産を根底から見直すことで、『鎌倉』の価値を世界に的確にご理解いただくことが可能だと考えるので、地域をあげて全力で再推薦を目指していきます」
次に、今回のアンケートでは11位となった「国立西洋美術館」です。フランス政府などが中心となり、近代建築の巨匠建築家ルーコルビュジエが設計した代表的な作品を一括して世界遺産リストに登録することを目指しています。フランス政府から、ルーコルビュジエが日本で唯一設計した国立西洋美術館を構成資産の1つとして推薦したいとの協力要請があり、日本も6力国の共同推薦に名を連ねているのです。
台東区世界遺産登録推進室の山崎さんの声です。
「今回の結果を受けて、皆さんに国立西洋美術館の歴史的価値を、もっと知ってもらいたいと、改めて思いました。国立西洋美術館は、第二次世界大戦で敵国財産としてフランス政府の管理下に置かれた『松方コレクション』がフランスから日本に寄贈返還される際に、ルーコルビュジエの設計で建築されたものです。戦後の日仏国交回復の象徴となった歴史的建造物であり、その設立には、様々なドラマがあります。ぜひ、これまでとは違う視点で『西洋美術館』を見学し、新たな魅力を感じてください。応援よろしくお願いします」
最後に、残念ながら12位となってしまった「宗像・沖ノ島と関連遺産群」です。宗像大社の沖津宮が鎮座する沖ノ島は、島全体がご神体とされる重要な海の信仰の地。発掘調査で出土した8万点の祭祀遺物が国宝指定され、「海の正倉院」とも呼ばれています。にもかかわらず、順位が振るわなかったのは、それがあまり知られていなかったせいでしょうか。
福岡県総合政策課世界遺産登録推進室の赤松さんに聞きました。
「沖ノ島は、宗像大社の神職しか上陸が許されず、さらに近年まで、島で見聞きしたことを一切口外してはならないという禁忌もあったので、知名度が低いのも当然です。しかし、4世紀後半から9世紀末にかけて行なわれた、対外交流の成就と航海の安全を祈る国家的祭祀をそのまま現在に伝える、とても重要な資産です。世界遺産登録に向け、今後、より一層広報・啓発活動に力を入れていきますので、皆さんよろしくお願いします」
今回はこのような結果でしたが、各々の背景にある歴史を知れば、魅力もいや増すでしょう。世界に日本の素晴らしさをアピールすることは大切なこと。ぜひ応援していきたいものです。皆様も、この機会に世界遺産候補地に足を運び、その魅力に直接触れてみてはいかがでしょうか。
更新:11月23日 00:05