2017年10月02日 公開
2023年03月09日 更新
近年、お城ブームが再燃しているといわれます。その理由は複数あるでしょうが、最近の特徴として、建物のあるお城だけでなく、土塁や堀が残るだけの戦国の城にも関心が広がっていること、また訪れる層も老若男女を問わなくなってきていることが挙げられます。
山城のような戦国の城にまで関心が広がっているのは、「天空の城」として一躍人気を集めた兵庫県の竹田城のような景観の美しさもあるでしょうが、もう一つは数年来の戦国武将ブームで、人物への親しみが高まったこともあるのかもしれません。
何も残っていなくても、あの武将ゆかりの城ならば行ってみたいという興味です。それを入口に、城そのものの面白さに惹かれていく人が増えているようにも感じます。
ところで戦国の山城にまで足を向けている人ならばともかく、一般的にはお城といえば天守を思い浮かべる人が多いでしょう。お城のシンボル的存在ですが、しかし、もちろんお城イコール天守ではありません。ちなみに「天守閣」という言葉がありますが、これは明治以降使われ始めたもので、江戸時代以前には天守と呼ばれていました。
城という字を分解すると、「土で成る」と書きます。これがまさに城の本質を表現しているといえるかもしれません。住居やムラの周囲の土を掘って堀を作り、掘りあげた土を利用して土塁を築いて、住居やムラへの外敵の侵入を防ぐ。これが城の原型です。古代の環濠集落なども、これに該当するでしょう。
では、堀と土塁で囲まれたシンプルな防衛施設が、どのような変遷を経て、今日目にする姫路城のような複雑で美しい大城郭へと発展したのか。以下、簡単に紹介してみましょう。
弥生時代には前述の環濠集落の他に、山地の頂上や斜面に暮らした高地性集落も営まれました。前者を平地の城の系譜、後者を山地の城の系譜の端緒とする考え方があります。
大陸からの技術導入によってつくられたとされ、比較的スペースのとれる山の尾根筋を城壁で囲んで、広い面積を確保するのが特徴です。城の内部には主に穀倉などの倉庫が設けられていました。一例に大野城(福岡県)、鞠智〈きくち〉城(熊本県)があります。
広い面積を材木塀などで囲み、中央に政庁などが置かれるのが特徴です。材木塀は文字通り高さ3mほどの材木を隙間なく並べたもので、まさに柵と呼ぶにふさわしいものでした。主に東北地方における朝廷の支配拠点で、城であるとともに、出先機関の意味合いが強いものです。一例に多賀城(宮城県)、払田〈ほったの〉柵(秋田県)があります。
やせた尾根に築かれた、初期の山城です。やせ尾根なので左右は急崖で敵の侵攻を防ぐことができました。また尾根に堀切を何ヵ所か切って防御するとともに、堀切間の尾根を平らにして曲輪〈くるわ〉(区画された区域)をつくることもありますが、基本的には自然地形を利用して防御していました。一例に小野城(福島県)、白旗城(兵庫県)があります。
古代山城や古代城柵は国が築いたものですが、中世の方形館以後は個人がつくったものです。武士の館を防御するための城で、中世平城の原型となりました。従来、鎌倉時代頃に成立したと語られてきましたが、最近は室町時代頃まで下るといわれます。また守護大名の館などの場合、館の背後に必ず山城がセットとなっています。一例に今川氏館(静岡県)、大内氏館(山口県)があります。
戦いが常態化する戦国時代になると、中世山城と異なり、山城でありながら広い曲輪面積を確保し、しかも曲輪と堀切を複雑に配置して、攻めにくい構造を人工的につくりあげていきました。これには築城技術の進歩と、武器や戦法の進化も影響しています。また本丸に大名の居所、斜面や麓に家臣らの居所が配置され、麓まで含めて城は大規模になっていきました。一例に春日山城(新潟県)、観音寺城(滋賀県)があります。
方形館から発達したもので、土塁を屈曲させ、何重にも堀をめぐらせて守りを固めた平城です。川や湿地、泥田などを巧みに利用して難攻の城になっていることが多く、兵の収容能力が高いので、敵に積極的な反撃をかけることができました。しかも日常は地域支配の拠点としても機能します。一例に田中城(静岡県)、勝幡城(愛知県)があります。
これらの発達と流れを踏まえながら、石垣を積み、瓦葺きの建物などを用いて完成されていった城のかたちが近世城郭です。鉄砲・大砲の合戦への導入、石積み技術の進歩、朝鮮出兵における戦訓なども活かした上、関ヶ原合戦後に徳川家康が全国の大名に命じた江戸城などの天下普請によって、近世城郭が全国に普及したと考えられます。一例に江戸城(東京都)、姫路城(兵庫県)があります。
以上、大まかな城の変遷をご紹介しました。もちろんすべての城がこのカテゴリー内には収まらないかもしれませんが、一つの基準にはなるでしょう。地元の城がどれにあたるのか、あらかじめ知ってから出かけてみると、より興味がわいてくるかもしれません。
更新:12月10日 00:05