2011年08月11日 公開
2023年10月04日 更新
清衡は「万人平等」を志し、それを平泉で実現したと論じてきました。私はそれを確信していますが、実はこれまで、それを証明するものは皆無でした。というのも源頼朝に滅ぼされたことにより、藤原氏の歴史は抹殺され、改竄され、ほとんど史料が残されていないからです。三年前、平泉の世界文化遺産登録が延期勧告をされたのも、ユネスコが「万人平等の理想国家など存在するわけがない」と見なしたからでしょう。
しかし今回、大震災が起きたことにより、図らずも、平泉によって培われていた「万人平等」の精神が、目に見える形で現われました。ご自身が被災されたにもかかわらず他の被災者を慮る方々や、両親を失った子どもたちが「もっとつらい人がいる」といって他の人を思いやる様子をみて、世界中が東北の人々の言動に胸を打たれたのです。ユネスコも、「この地にはかつて、万人平等の理想国家が本当にあったのではないか」と気づかされ、平泉を世界文化遺産としたのでしょう。平泉の理想国家としての在り方は、歴史や史料にこそ残されていませんが、東北の人々の血の中に、まごうことなく息づいていたのです。
東北人の心に「万人平等」の精神が息づいているならば、新たな理想国家を築いていくことは決して不可能ではありません。そしてまた、清衡が平泉で実践した国づくりは決して古びたものではなく、現代においても通じるはずです。これから東北の復興を期するうえで、平泉と奥州藤原氏の歴史は、我々に多くの示唆を与えてくれることでしょう。(談)
更新:11月22日 00:05